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    一年目の心境

    教師は教える側だけじゃない、教わる側でもある。
     私はおよそ15年前大学で日本語を勉強し始めた。10年前のタイにおける日本語の教育は現在と違って学習者は自らの力で日本語を学習できる手段が限られたため、教師の役目は大きかったと感じている。物事を誰かに教えるとは簡単なことではない。いかに学生に内容を簡単に明確に伝えられるかは教える側の見せ所だと思う。特に第二、第三語学教育は極めて難しい。だから私にとって日本語教師は非常に難しい職業だと思っている。そんな状況でもいきなりその職業をしないといけないときが訪れた。全く日本語教育の経験がない私には不安だった。本当にこの仕事をするか決心するのにものすごく悩んでいた。しかも、この仕事を始めるまでは1週間の準備時間もなかった。初めて担当した科目は、初心者から1級以上のレベルであり、あまりにもレベルの差が大きい。日本語学習歴が15年近くあっても教えられる自信ですらなかった。
     学習者の初心レベルの場合はいかに学習者の興味を引いたり、持たせたりできるかが一番大事だと思う。日本語学習者は様々な動機やきっかけで日本語の勉強をはじめた(→はじめる)。日本語は最初が面白くて楽だが、レベルが上がるとだんだん複雑で難しくなる。自分がある程度日本語が出来るようになっても、それを学生に伝えられないと意味がない。始まる前、「新日本語の基礎」を勉強したで、導入、説明、まとめのような順番があるらしい。初めて学生の前に立ち、教え始めた時には、ものすごくドキドキした。教科書に書かれているようにどうやって授業の流れをスムーズに進めるか(→進めたらいいのか)分からなかった。時には学生の目を見る(→見た)瞬間、自信がなくなってしまい授業を続けられない時もあった。どうやら悩みは授業の流れだけではなかったようだ。また、自分の教え子の顔を1週間以内から一ヶ月以内に覚えるのが一番良いと言われた。と言っても三ヶ月経ってもまだ覚えられていない。それらの問題より深刻に悩まされるのは試験問題作成と評価だった。試験問題作成はちゃんと目標通りにしないといけないらしい。それに自分が考え出した問題は本当に学生のレベルにふさわしいかどうか等も考えなければならない。授業中にちゃんとしていた学生はなぜかテストの時によくできなかった。それによって評価に悩まされていた。悩まされたあまりに(→悩みすぎて)不眠症が二ヶ月も続いた。そんな状況でも私の授業は一学期が終わった。
     私の学校では、学期末に学生は匿名で教師の評価ができる。授業の流れからモラルの教育まで(このことはタイだけかもしれない)評価の項目がある。私の三ヶ月間の評価は様々だった。結果は新米としてはまあまあだった。しかし、様々な評価、意見の中に驚くほど鋭い指摘があった。それは、時間の配分や授業進行の速度や内容のバランス化などに関する指摘だった。その時、教育分野の先輩であり同期生でもある友だちのことが思い出された。「教師は教える側だけではない。実は学生に教わる側なんだ。」という言葉。当初はその意味がよく分からなかったが、学生の指摘を受けた後、なんとなく分かるようになった気がした。
     私の悩みの相談に乗ってくれた友達は、私を以下のようにアドバイスした。「「日本語教育」の本当の意味がまだ分かっていない。「日本語の教え方の秘訣」(有馬俊子著スリーエーネットワーク出版)を読んでみ!」「読んだ後、まだできないなら日本語講師をやめればいい!」と言われた。「日本語教育はどのようなものなのか、どの程度すべきかなども意義を理解できないとうまくできない」とアドバイスしてくれた。確かに私はまだ日本語教育に真剣に取り組めていないかもしれない。自分の都合で職場を離れた後、全く日本語教育について自習をしていない。これから、薦めてくれた本をゆっくりと勉強し、それと同時に学生から色々学び授業に取り入れたいと思う。会社では4ヶ月という試用期間があるが、私にとっての試用期間は2~3年になるだろう。

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